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Pfizer co.jp ホーム ファイザー日本法人最新の取り組みSTOP!AMR ファイザーの新入社員と学ぶ AMRと闘うために、私たちが今できること 第4回 「製薬企業はAMRにどう取り組んでいるのだろう」STOP!AMR ファイザーの新入社員と学ぶ
AMRと闘うために、私たちが今できること
第4回 「製薬企業はAMRにどう取り組んでいるのだろう」

感染症はウイルスだけではなく、細菌などさまざまな病原体によって引き起こされます。この病原体に薬が効かなくなる「薬剤耐性(AMR:エイエムアール)」が問題になっており、私たちの生活に大きな影響を与える懸念があります。
そのAMRとは一体何なのか、なぜ問題になっているのか、どのように対策すれば良いのかを、全4回にわたって、専門家の方々にファイザーの新入社員が聞いていきます。
今回は「製薬企業はAMRにどう取り組んでいるのだろう」をテーマに、ファイザーの社員であると同時に日本製薬工業協会(製薬協)にも所属している湯淺 晃さんにお話を伺いました。
製薬企業は抗菌薬の研究開発を続けていますが、AMR対策には研究開発に関連する課題があることがわかりました。



湯淺 晃
日本製薬工業協会 国際委員会 委員 / ファイザー株式会社 ヘルスアンドバリュー統括部



岩田さん
ファイザーの新入社員。最近はまっていることは「韓国ドラマを鑑賞する」こと。



狩谷さん
ファイザーの新入社員。最近はまっていることは「先輩方に教えてもらった美味しいお店を巡る」こと。

INTERVIEW INDEX

  • 1.AMRは製薬業界全体で取り組む必要のある問題

  • 2.AMRについてのファイザーの取り組み

  • 3.感染症治療薬の研究開発の難しさ

  • 4.良い抗菌薬はなるべく使わないというジレンマ

  • 5.抗菌薬の研究開発は国民の安全保障に関わる投資であると考える

1.AMRは製薬業界全体で取り組む必要のある問題


  
 

湯淺さん、今日はよろしくお願いします。


 

よろしくお願いします。お二人は製薬企業がAMRに対してどのように取り組んでいるかご存じでしょうか?



抗菌薬を研究開発することで、AMR対策に取り組んでいると思います。



そのとおりですね。製薬企業として、感染症に苦しむ患者さんの治療に使用される抗菌薬を研究開発することは重要な使命です。ただ、抗菌薬の研究開発だけではAMR対策は十分ではありません。医療従事者に抗菌薬の適正使用を推進することや、抗菌薬を患者さんにきちんと服用していただくこともAMR対策につながりますので、一般の方々にさまざまな方法で啓発することも製薬企業が果たすべき大事な責任なのです。


 

日本の製薬企業の団体である製薬協は、AMRに対してどのような取り組みをしているのでしょうか?


 

製薬協は1968年に設立された任意団体で、現在は研究開発志向型の製薬企業71社(2022年10月1日現在)が加盟しています。12の委員会とシンクタンク機能である医薬産業政策研究所(政策研)を含めた6つの専門組織が設定されており、製薬産業に共通する諸問題の解決や、医薬品に対する理解を深めるための活動など、製薬産業の健全な発展に向けた取り組みをしています。
私が所属している国際委員会では、国をまたいでの対策が求められる課題に取り組んでおり、AMRはそのひとつです。そのため、メディアフォーラムを開催することで報道関係の方達にもAMRの問題について理解していただき、記事を通じて一般の方にAMRの情報をお届けしています。また、政策研では4か月に1回「政策研ニュース」を発行しており、主に製薬産業の課題に関連する記事が掲載されています。私自身、この政策研ニュースにもAMRに関連する記事を寄稿し、AMRやAMRを取り巻く課題に対するメッセージを発信しています。
 


※日本製薬工業会が開催したAMRに関するメディアフォーラムはこちら 
※湯淺さんらが政策研ニュースに寄稿した記事はこちら 

2.AMRについてのファイザーの取り組み


 

製薬業界全体でAMRの問題に取り組んでいるのですね。
AMRに対する製薬企業の使命として抗菌薬の研究開発があるとのことでしたが、ファイザーはどのように抗菌薬の研究開発に関わっているのでしょうか?


 

ファイザーは第二次世界大戦中にペニシリンを大量生産することに成功し、感染症治療の発展に大きく貢献しました。その後も感染症治療薬の研究開発に注力し、現在では薬剤耐性菌に対する抗菌薬も含めた多くの感染症治療薬を医療現場にお届けしています。
また、2016年にスイスで開催されたダボス会議で、薬剤耐性菌との闘いに一致団結して対処することを求める「抗菌剤耐性との闘いに関する医薬品・バイオテクノロジーおよび診断業界による宣言」が発表されました。この宣言には18カ国の医薬品、診断薬、バイオテクノロジーに関する企業が起草に関わり署名しており、ファイザーもそのうちの1社です。そして現在も、感染症治療薬の研究開発に積極的に取り組んでいます。


 

ファイザーはグローバル企業としてどのような強みがあるのでしょうか?

​​​

 

世界に拠点を持つファイザーでは、世界の情報を即時に提供することができます。たとえば、ATLAS(Antimicrobial Testing Leadership And Surveillance)という抗菌薬の薬剤感受性サーベイランスでは、世界規模のプログラムを公開しています。ATLASにはインターネットを通してどなたでも自由にアクセスし、世界のAMRに関する情報を入手することができます。

ATLASのリンクはこちら 



ファイザーはその他どのような取り組みをしているのでしょうか?
 




医学エビデンスに基づく(Evidence-based)AMR対策を推進するために、AMRが日本の医療経済におよぼす影響に関する学術論文を医学雑誌に公表しました。こういった研究によって、AMRによる経済的なインパクトが周知されるきっかけになればと考えています。
また、AMR対策には政府、国際機関、製薬企業、医療従事者だけではなく、一般の方の協力も不可欠です。そのため、今年は一般の方にAMRに対する理解を深めてもらう動画やリーフレットなどを制作しました。

※ファイザーのAMR啓発動画はこちら 
※湯淺さんらが公表した論文はこちら 

3.感染症治療薬の研究開発の難しさ



ファイザーもAMR対策のためにさまざまな取り組みをしているのですね。
今までは取り組みについて聞いてきましたが、製薬業界としてAMRに関する課題はあるのでしょうか。

 

 

実は、抗菌薬の研究開発数の減少が国内外で盛んに議論されるようになり、日本ではそれが特に顕著です。2010年から2019年に日本で承認された抗菌薬の数は欧米と比較しても少なく、調査対象14カ国の中でワースト2位タイだったという結果が学術論文として2021年に公表されました※。

 



日本の抗菌薬の研究開発数が減少しているということですよね。それはなぜでしょうか?




抗菌薬の研究開発の課題にはさまざまなものがあります。臨床開発における制度や規制などが問題になる場合もありますが、抗菌薬の研究開発においては経済的な課題が特に重要です。これからは主にこの課題にフォーカスしてお話します。

4.良い抗菌薬はなるべく使わないというジレンマ



新規抗菌薬の研究開発には莫大な費用と時間がかかります。また、感染症の中にはHIVや結核など、中には長期間にわたる治療薬の服用を必要とする感染症もありますが、多くの薬剤耐性菌感染症は急性感染症であるため、治療終了までの平均的な抗菌薬の投与期間が数日から数週間と短く、販売量もそれほど多くありません。

 

 

抗菌薬の研究開発に必要な費用と比べても、販売量がそれほど多くならない場合があるということですね。
 


 



そうなのです。
さらに問題なのは、特定の抗菌薬を集中して使用すれば、その抗菌薬に対する薬剤耐性菌が増えてしまう可能性があります。そのため、多くの薬剤耐性菌に効果がある優れた抗菌薬が研究開発されたとしても、従来の抗菌薬が効かない薬剤耐性菌感染症を治療するために、使用を控えて将来に備えておく必要があり、販売量や使用量は少なくなります。



抗菌薬の研究開発には特有の課題があるということですね。



抗菌薬は人類が感染症と闘うために不可欠ですが、製薬企業はこうした経済的な課題を一つ一つ克服しながら、抗菌薬を研究開発し、AMRと闘っていかなければならないのです。

5.抗菌薬の研究開発は国民の安全保障に関わる投資であると考える



AMRと闘っていくために我々はどのような視点をもつ必要があるでしょうか?

 

 

COVID-19によって、普段から感染症治療薬の研究開発や製造技術に投資をしておく必要性を深く考えさせられたと思います。これはAMR対策でも同様で、抗菌薬の研究開発には多額の費用が必要となりますが、その金額よりもAMRがもたらす経済的な損害の方が上回る可能性があります。
そのため、感染症に対する医薬品の研究開発にかかわる費用や財源は、国民の安全保障に関わる投資として考える視点をもつことが求められます。
 


 



AMRに対する備えとして、新しい抗菌薬の研究開発を促進するような仕組みや制度はあるのでしょうか?


 

その一つとして、「プッシュ型インセンティブ」という医薬品の承認を取得する前に必要な開発資金を集め、研究開発を促進する仕組みがあります。2020年には、日本の企業を含む世界の大手製薬企業が中心になって「AMRアクションファンド」を立ち上げました。今後、日本のバイオベンチャーがこのファンドを利用し、日本における抗菌薬の研究開発が促進されることが期待されます。
また、「プル型インセティブ」という薬の使用量(販売量)と売上(収益)を切り離した仕組みでは、抗菌薬の承認取得後に成功報酬を受領したり、使用量とリンクしない定額が継続的に支払われます。日本のプル型インセンティブ制度については議論されている最中で、こうした制度の導入で抗菌薬、特に薬剤耐性菌治療薬の研究開発が促進されることを期待します。



AMRと闘っていくためにも、制度面での支援も必要なのですね。
最後に湯淺さんのAMRに対する想いを聞かせてください。



先ほど述べたように、抗菌薬の研究開発は経済上の課題もありますが、ファイザーは今後も世界中の人々と医療関係者の需要に応え、感染症に罹患されて苦しまれている患者さんに、抗菌薬をはじめとした治療薬をお届けしてまいります。私も日本製薬工業協会の一員および製薬企業の一員として、AMRを公衆衛生上の重要な問題であると捉え、感染症治療薬の研究開発を促進する取り組み等のAMR対策を継続していきます。最終的にはそれらの活動が患者さん、そして国民の皆さんの健康の増進に寄与することができると信じています。
 

※Outterson K, Orubu ESF, Rex J, et al. Patient access in fourteen high-income countries to new antibacterials approved by the FDA, EMA, PMDA, or Health Canada, 2010-2020. Clin Infect Dis. 2021.
 

今回のポイント
 

① 製薬業界は、AMRに対してさまざまな取り組みをしています。
② 抗菌薬の研究開発における課題の一つとして、経済的な課題があります。
③ ファイザーは今後もAMRの問題に対して積極的に取り組んでいきます。 

 

※掲載されている本文と写真は取材当時(2022年11月)のものです

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